シルクと聞くと「デリケートだからお手入れが大変そう」「家で洗うなんてとんでもない」と、敬遠してしまう方も多いです。
まるで特別な日のだけのものと思われがちですが、シルクの特性を少し理解してあげれば、もっと気軽に、ずっと長く、あなたの日常に寄り添ってくれる優しい素材です。
かけがえのないパートナーのように長く愛でていくために、お手入れのポイントを紐解いていきましょう。
シルクへの向き合い方
シルクの成分は、肌や髪と同じ
動物性タンパク質です。
ご自身をケアするように。
低刺激のもので優しく。
がキホンです。
お手入れ方法

洗濯表示は衣類を安全に長くご愛用いただくための大切なガイドラインです。しかし、シルクの特性や適切なケア方法を理解することで、必ずしも表示通りにしか扱えないわけではありません。
素材への理解を深めることで、ご自身のライフスタイルに合わせながら、より自由に、そして安心してシルク製品をお楽しみいただけます。
お手入れの流れ

準備
シルク専用洗剤 または おしゃれ着用の中性洗剤を用意してください。
ご自身をケアするボディーソープやシャンプーをお使いいただくことも可能です。
シルクの扱いは、ご自身のケアと同じように・・と考えると、アルカリ性に弱いため(強い洗剤を使うと手がカサカサしますよね)、おしゃれ着用の中性洗剤か、シルク専用洗剤をご使用ください。
石鹸は弱アルカリ性のものが多いですが、使用したからといってすぐに生地が傷むわけではありません。ただし、洗い上がりの風合いや光沢が変化する場合がありますので、ご注意ください。
シルク専用洗剤は、デリケートなシルク素材を優しく、効果的に洗うために特別に開発された洗剤です。よって、シルクに負担が少なく安心してご利用いただける点でおすすめです。
ただ、「シルク専用洗剤」がなくてもお手入れはできます。ドラッグストアなどで手に入るおしゃれ着用の中性洗剤(エマールやアクロンなど)もシルクの洗濯に適しています。「中性」であることを確認し、「ウール・シルクも洗えます」といった表示があるものを選びましょう。
シルクに漂白剤を使うのは、原則として避けるべきです。(洗濯表示でも可とはしていません)
シルクはタンパク質(アミノ酸)でできたデリケートな天然繊維であり、一般的な漂白剤に含まれる強い成分は繊維を傷めてしまいます。
特に塩素系漂白剤は、黄ばみ、色褪せ、光沢の喪失、生地がもろくなるなどを引き起こすため、絶対に使用しないでください。
ただ、コロナ禍でシルクマスクを漂白したいという声を多く頂きました。
漂白剤を使用する場合は、比較的穏やかな作用の酸素系漂白剤(非塩素系)に限定してください。ただし、以下の点に十分注意が必要です。
- 長時間のつけ置きは避ける
- 必ず事前に試す
- 濃度に注意する。
これらの注意を払っても、シルクへの負担は少なからずありますので、ご理解をお願い致します。

洗い と すすぎ
シルクはデリケートな繊維のため「手洗い」がおすすめです。
洗剤を容器にいれ、ぬるま湯に溶かします。液体洗剤の場合は水で大丈夫です。洗剤が完全に溶けていることを確認してください。
衣類を水に浸したら、やさしく「押し洗い」または「振り洗い」をしてください。
特に汚れが気になる部分は、その部分に直接洗剤を少量つけ、指の腹でやさしく「つまみ洗い」をすると良いです。
泡が出なくなるまで、水を2~3回入れ替えながら丁寧にすすぎを繰り返してください。洗剤成分が残ってしまうと、シルクの変色や劣化の原因となることがありますので、しっかりと洗い流すことが重要です。
洗えます。ただ、手洗いをおすすめする理由をご理解ください。
シルクは、繊維の表面が非常に柔らかく、摩擦に弱いデリケートな素材です。洗濯機での強い摩擦は、シルク特有の光沢が失われたり、なめらかな肌触りが変化したりする原因となるため、基本的に手洗いを推奨しています。
しかし、お手入れの手軽さを優先したい方もいらっしゃると思います。最近の洗濯機は「手洗いモード」など機能も進化しており、また、洗濯用ネットに入れて摩擦を防ぐといった工夫も可能です。そのため、「洗濯機が絶対にダメ」というわけではありません。
デリケートな素材であることを理解し、「できるだけやさしく」洗うことを心がけてください。

脱水 と 乾燥
タオルを使う方法がおすすめです。
- シルク製品が水分を含んだ状態で、まず丁寧にシワをしっかり伸ばします。
- 清潔な乾いたタオルの上にシルク製品を広げます。タオルの上から軽くポンポンと叩くようにして、水分を吸収させます。
- 水分を取り除いた後、再度シワを丁寧に伸ばします。
タオル脱水が終わったら、必ず陰干しをしてください。シルクは天然繊維のため、直射日光に長時間当て続けると、黄ばみや色褪せの原因になります。必ず風通しの良い日陰で干すようにしましょう。
【重要】乾燥機は避ける
乾燥機の使用は絶対に避けてください。高温によりシルクが大きく縮んだり、繊維が傷んだりする原因となります。
シルクはその美しい光沢ゆえに、他の繊維よりもシワが目立ちやすい傾向にあります。気持ちよく着用するためにも、できるだけシワを防ぐ工夫をしましょう。
洗った後、シルク製品がまだ水分を多く含んでいる状態で、シワを丁寧に伸ばしてから干すのがおすすめです。シルクは乾きが早い素材なので、多少湿っている状態でもすぐに乾燥します。
この「ひと手間」を加えるだけで、乾燥後のシワが格段に目立ちにくくなります。ぜひ試してみてください。
ブラウスやパンツなどの大きなシルク製品は、湿った状態でハンガーにかけて、タオルで適度に水分を取りながらシワを伸ばします。水が滴るほどの湿った状態で干しても問題ありません。シルクの重みと重力の力でシワが自然に伸び、乾いた時にはきれいな状態になります。

仕上げ
お出かけ時に身につけるシルク製品は、アイロンでシワを取ることで一層美しくなります。少し手間はかかりますが、ぜひこのひと手間を加えてご利用いただくことをおすすめします。
アイロンにはシルク用の温度設定(中温)にしてください。シワを無理に伸ばそうと力を入れるのではなく、アイロンをサラッと滑らせるようにかけましょう。
衣類はスチーマーがおすすめ
シャツやブラウスなど、立体的な形状の衣類はアイロンがけの難易度が上がります。そのような場合は、衣類用スチーマーの利用がおすすめです。ハンガーにかけた状態でスチームをあてるだけで、後は重力でシワが自然に伸びてくれます。
アイロンでシワを取る基本的な方法は、衣類のシワ部分に水分を含ませ、アイロンの熱で乾かしながら伸ばすことです。そのため、以下の方法が効果的です。
霧吹きで湿らせる: シワの部分に霧吹きで軽く水分を与えてからアイロンをかけます。
濡れタオルを活用: 濡らした清潔なタオルをシワの上に置き、その上からアイロンをかけます。
スチームアイロンを使う: スチーム機能を使ってアイロンをかけるのも効率的です。
シルク製品の種類やアイロンの温度設定によって、当て布の必要性は異なります。迷った場合は、当て布をしていただく方が安全です。
もし当て布がない場合は、白いA4コピー用紙で代用できます。シワに水分を含ませた後、その上にコピー用紙を置き、上からアイロンをかけると、きれいにプレスされた状態に仕上がります。

どんなに心を込めて
お手入れをしても
時とともにその姿は変わります。
それは、愛用した時間の証です。
柔らかく手に馴染んだ風合いも
眩しい輝きを失っていくことも
重ねた時が織りなした
あなただけの物語です