私たちは新潟県五泉市で100年続く絹織物工場です。シルクしか織った事がありません。また主に着物や法衣となる染める前の白い反物しか織った事がありません。その立場で解説(あくまで主観です)で説明致します。
シルク商品の日本製と海外製の違い
このお問い合せは本当によく頂きます。もっというと「絽紗さんは日本製ですか?」と「日本製と海外製どう違いますか?」に分かれます。
このような質問をされる方は「日本製を購入したい」というのが前提であり、でも価格が高いからどう違うのだろう?と気にしているのか・・と思っています。
実際、大手モール(楽天やAmazon)など市場に多くのシルクの商品が溢れています。そしてその多くが海外製(中国製が多い)というのが現実です。日本製ももちろんありますが、全体的な数は少ないと感じます。いやもしかすると広告力、価格が高いなど理由から検索で上位に来ないから気づかれないだけなのかもしれません。
また日本製が好む人に対して欺くかのように商品名に日本製と書いてあり、日本の事業者が販売していたが、Made in Chinaだったということもあったそうです。
つまり、現在のネット販売の場合、WEB巧者な事業者が多いため、いかに売るかに主眼をおいているので、なんとなくその気にさせることメインで、のせられて買ってしまった、ということも少なくありません。
お問い合せが多いので「日本製と海外製の違い」みたいなタイトルなってしまいましたが、どっちがよい、悪いは本当に消費者がどのようなものを求めているかにも違いますし、色々な製造業者さんがいるため結論付けはできません。
ただ私たちの商品だって、常に安価な海外製と比較されているので、どのようなところを見てほしいのか、など踏まえて記載したいと思います。
なお、海外製シルク商品と書きましたが、範囲が広すぎます。問い合わせのほとんどが中国製マスクと比べて・・でしたので、以下中国製のシルクマスクなど小物雑貨を例として記載します。
また日本製と書いていますが、他社さんの事まで正しく言及できないので、あくまで当社ブランド「絽紗」で比較します。
先にまとめ
価格の違いについて
圧倒的に中国製が安いです!よね・・
なぜそんなに安くできるの!?!?といつも思います。圧倒的な大量生産、低い人件費(長時間労働なども噂され)で作るからというのは容易に推測できることでしょう。
またシルク糸の生産高の9割は中国とききます。自国なので原料費は、私たちより安いのだと思います。
ただ、安いのには理由があります。もしかすると何か大切な工程を省いているかもしれません。逆に最新の技術によって効率化しているのかもしれません。
本当に安いだけの期待はずれの商品かもしれませんし、抜群のコスパをもつ商品かもしれません。
安易に中国製=安かろう悪かろうと決めつけず、ものを見る目を養って頂く方が、私たちの優れているところもしっかり見てもらえるのではと思っています。(価格だけでとびつかれるとどうにもならないので。。)
私たちの商品だって中国製と比較すれば高いですが、ファクトリーブランドとしてやっており流通を省いて販売しているので、同じ生地を生地問屋さんに行ってメーカーやブランドさんが商品を作った場合とは、ものすごい価格差になるわけです。そういう点ではコスパは良いかな・・とは思っています。
品質の違いについて
品質についてよく言われることは、「顧客が支払う対価に対しての価値なので、人によって捉え方が違う」ということです。ただ、それではコメントしづらいので、価格はおいておいてあくまで商品そのものの丁寧さ・美しさ・傷、汚れなど不良品でないか、などでコメントします。
生地の品質について
生地の品質は、当社の着物の織りの伝統技術を用いた生地は、しなやかで美しく品があり中国製と比べ明らかに上質であるのは間違いありません。
では海外製の生地が粗悪でだめな商品かといったら必ずしもそうではありません。比較すれば違いは明らか。でも商品として十分満たしているというのも多いです。
わたしたちの業界の話になりますが、昔、女性の着物や黒紋付などは重め(生地が厚くくて重いもの)が上質で良いとされていました。でも現在織っているものは重すぎると疲れるからと言って重いものは敬遠されているようです。昔はオーバースペックだったのでしょうか。
脱線しましたが、やはり大事なのは、日本製か中国製という観点よりは製造元・販売元が信頼できるかどうかと思います。
生地も織物であれ編み物であれ拠点(場所)が違うだけの話で、機械はさほど変わらないと思います。逆に大手資本が海外で生産拠点を築き上げた場合、最新の機械が導入されていて日本で生産するよりも良い、という見方もできます(U社)
逆に最新の機械だと生産効率を優先するばかりに、ゆっくり丁寧に織れないので、しっかりとしなやかな織物が作れないなど弱点もあります。
例えば、日本のメーカーさんが海外から生地を仕入れて、日本で縫製した商品は日本製になります。中国製のよい生地で作った日本製もあれば、中国製の粗悪な生地で作った日本製もあります。こうなってくるともう分かりません。
また織物とニットの編み機でつくったシルクの布とでは、同じシルクでも性質が全く違います。伸びる伸びないの違い、柔らかさ肌触りの違い。どちらが良いかの比較ではなく、商品に対してどちらが向いてるかです。
つまり、、かなり専門的な話になってしまうので、日本製の生地の方がよいと思うが、そこまでは分かりづらいので販売事業者を信頼するかどうかが良いか思っています。
色の違いについて
正直なところ染色工程での違いを感じた事はあまりありません。海外製は大きな会社さんが企画して大量に作っているだけあり、海外製の方が色はトレンドに準じていたりなど好意的に感じることが多いです。
ただ日本の染色工程ではJIS規格に準じて安全性を担保していますが、海外ではどうでしょう?例えば口につけるマスクなら、安全性が担保されていない化学染料が使われていたらどうしよう・・と思います。私も詳しい事は分かりませんのではっきりとした事は言えませんが、不安に思うことがあります。
縫製の違いについて
例えば洋服の生産拠点は中国はじめ東南アジアなど海外が主流です。日本で縫製するものも多くありますが、どちらかというと高価格帯の品に多いと思います。
そのような生産背景もあり精巧な商品(スーツとか)でない限り縫製の技術面で大きな優劣はないのかな・・と思います。
ただ、、全体的に検品基準が甘いのか、管理がゆるいのか、、スピード優先なのか、不良品が多いと感じてしまいます。そのようなレビューも多く見かけます。
実際、わたしの購入体験でも丁寧にできているのもあれば、こんな雑なつくりで販売するのか・・と思うこともよくあります。
耐久性の違い
これは生地、染色、縫製すべてのトータルバランスです。
特に耐久性には「生地」の良し悪し、種類が大きく関係してくると思います。
それは日本製か中国製かより、「織り」か「編み」かの違いです。布を構成する組織上、耐久性では「織り」が強いです。
例えばシルクのマスク。ニット製だと何度も洗うと伸びやすい(耐久性×)。ハリがないから口周りにペタペタくっつく(性能×)。伸び縮みするから顔にフィットしやすい(フィット感○)、などです。
編み物のセーターは洗って干し方を間違えると型崩れ、伸びるなどありますよね。ジーンズのようなしっかりおられたものは耐久性もあり伸びません。
もちろん生地の良し悪しもありますが、まずはどのような種類の生地かでどのくらい使えうるか、お手入れの方法なども変わってくることを忘れないでください。
その他の品質の違い
個人的によく感じる事は、匂いです。
なんというか油っぽい匂いが中国製のシルク商品からよく感じます。これはなぜかは分かりません。長期輸送によるもの、生産する場所の匂い、ただ不安に感じます。
商品力の違い
中国製の場合でも、商品名に恥じない最低限の性能は持っていると思います。
また大量に作るということは大量に売る、ということです。多くの人(マス)が欲求するポイントを抑えていると感じます。
ただ当たり前ですが、大量に作られているので、似たようなものがたくさんあります。例えば楽天でシルクマスクなどと検索すると同じ商品/似た商品が羅列されます。
このような場合商品の改善などのサイクルは遅くなるでしょう。大多数に向けてモノづくりしているので細かいフットワークでは劣ると思います。
では絽紗はどうでしょうか?
例えば、新しい商品を作る場合、作りたいものを想像することや、消費者からこういう商品を作ってと情報を頂いたり、その商品のリンクを頂いたりもします。
その際、ただ真似して作れば簡単かもしれませんが、同じものを作りたいと思いませんし、そもそも似たようなものならば安い方が勝つのでしっかりと分析し、ユーザーニーズを探り差別化をはかって商品化します。
つまり、独自性やかゆいところに手の届くような思いやりは強いかと思っています。またリリースした後が完成ではないので、お客様の要望を聞きながらブラッシュアップしていく工程は強いと思っています。
情報の違い
個人的にはここが一番違うのではないかと思っています。
商品を企画する時、市場調査としてWEBで他社商品の調査をします。レビューもみます。もちろん購入もし使い勝手も評価します。自分たちのやりたいことと、ユーザーの要望と、実現可能性、他社との差別化、価格等々色々と考えバランスとりながら商品を作っています。
その為、WEBで色々と情報収集しますが、同じような商品、同じような文章、同じ画像ということが多いです。そうですよね大量生産された商品は多くの小売店にわたっていき商品を販売する訳ですから、シルクの専門家でなければ細かいうんちくを語れるわけもなく、提供された情報を羅列するしかありません。
また情報が少ない→不透明→不安 という印象を私は持ってしまいます。シルクに携わるものだからかもしれませんが、例えば繊維は水が大切なのでどのような土壌で作っているのか、ということはとても気になります。汚染された水だったら嫌だな・・とか考えてしまいます。
またどのような人が、どのような思いで作っているのかな?とか大切にしたいです。
そういう点で「絽紗」は自社企画・自社製造・自社販売なので、商品の目指すところ・コンセプト・生産工程のこと、ブランドの背景・製造元のことなど、余すことなく語れます。つまり絽紗のよいところは安心できる精度の高い情報ではないかと思います。
ただ、製造者=消費者とは一番遠いところにあるものですので、一方的な情報になっていないかは大切と思います。
まとめ
個人的には「日本製だから」とか「海外製だから」という評価軸だけで判断するのは良くないと思います。今回お問い合せの多さから中国製を例にとしましたが、全てを語れるものではありません。あくまで購入体験からの主観です。
ただ、細かい点まで比較して商品を選ぶかといったらそんな時間もありません。一消費者としても、高額な車や家電製品を購入するわけではないのですから、ある程度上辺の情報で判断し時間をかけずに購入することも多いでしょう。
そういう点で細かいことはさておき「日本製」を選ぶことは間違いないでしょう。
やはり精巧な作りであり、あらゆる面で安心・安全であることが多く、お金さえ許せば満足する商品に出会える確立が高いからと思います。