シルクを使ったマスクはたくさんあります。
では、何が違うのでしょうか?
見た目(デザイン)の違いは視覚的に判断できますが、顔や口に直接触れるものなので、もう少し踏み込んで見たほうが良いと思っています。
ここでは、お選びいただく際の観点(目利き?)としてまとめてみました。求めているものや素敵な商品に出会えるようにと、参考にしていただければと思います。
※具体的に何が優れているなどは、私どもが試験している訳ではありませんので記載していません。
ポイント:
①組成表記で素材(絹糸の使用率)を確認する
②生地の種類を確認する。
③原産国を確認する。
確認その1:組成表記で素材(絹糸の使用率)を確認する。
「シルクマスク」といったら、何を考えますでしょうか?
シルクの糸を使ったマスクですよね。
シルクの糸を使っていればシルクという言葉を使うと思います。
ただ、どのくらいシルクを使っていますでしょうか?
よって、組成表記(素材)を確認することをオススメします。
例えば、綿90% 絹10%のマスク場合、どのような表現をすると思いますか?
見出しには、限られた文字数というのもあり、シルクコットンマスクやシルク混マスク、さらにはシルクマスクとすることもありえると思います。
シルク混も良いところがあると思いますが、もし全てシルクを期待していたのに違ったというのはがっかりします。販売している側も、誠実の表記して商品の良い所を説明しているだけなのに勝手に勘違いされても困ります。
マスクは顔・口にふれるものです。組成については確実に確認していただきたいと思います。
また「シルク」という言葉は色々変化することも多いです。「シルキー」とか「シルクタッチ」「シルクのような」などと表現される場合もあります。
絹ごし豆腐のように、昔から美しい、白い、サラリとした肌触りのものには「絹」、「シルク」といった言葉を使いますのでご理解いただけると思います。しっかりと組成を確認すれば勘違いすることはありません。
最近では「アイスシルク」などという言葉も出てきました。私たちが知りうる範囲ではアイスシルクという繊維は存在しません。
お客様より聞かれたので調べたのですが、ある商品ではおそらく通常のシルク生地を使ったものですが、ヒンヤリすることから、消費者の方に分かりやすく伝えるために「アイスシルク」という表現を使って伝えているのだと思います。
また、ある商品では、アイスシルクと全面に打ち出しているけど、全くシルクを使用していませんでした。(驚愕のシルク0%!!)おそらく「アイスシルク効果」のようなものを「アイスシルク」と称して売り出しているのではないでしょうか?
この時、組成表記を見るとわかります。
正しい組成(ポリエステル96%、スパンデックス4%)で記載しているところもあれば、「素材:アイスシルク」と書いているところもありました。
確かに猛暑でのマスクをどうしようかと悩んでいる方に「アイスシルク」の言葉から受けるイメージは、冷や冷やで安心安全、光沢もあって、肌触りもやさしい。そうなったら飛びつきたくなりますよね。
このような表現は少なからずあると思いますので、できる限り組成表記を確認頂き、もし記載がない場合はお問合せ頂いた方がよいかと思います。WEB通販は顔が見えませんが、お互いに安心・納得してお買い物できるよう心がけたいと思っています。
確認その2:生地の種類を確認する
シルクがどのくらい入っているか確認できたら、今度は使われている生地がどんなものなのか確認するのが良いかと思います。なぜなら生地の作り方で特徴が変わってくるからです。
最近は写真がきれいでライティング次第でとても光沢のあるように見えたりします。商品の良さを伝えるためには必要だと私たちも思っていますが、その写真の裏付けを取れるぐらいの知識を持っても良いかもしれません。
織物かニット(編み物)か確認する
まず、織物なのかニット(編み物)なのか?判断するのがよいかと思っています。通常、このマスクはニットです、これは織物を使っています、のような事はあまり記載しません。通常書いてあることは、特徴や生地名ですので、これで見分けることになります。
織物とニットでどういう違いがあるのか?
生地の作り方が違ってくれば特徴が違います。肌荒れで悩んでいる人には織物が向いていると思いますし、柔らかくて伸び縮みするのが欲しいという方もいます。
一般的な特徴について
織物:高密度である、ハリがある、光沢がでる、毛羽立ちが少ない、
ニット:伸縮性がある、柔らかい。
と思います。
では、なぜこのような違いがでるのでしょうか?その理由一つは、そもそもの織物とニットの構造の違いによるものです。
織物
織物はたて糸とよこ糸が交わり織られますのでニットより密度が高く耐久性があります。
ニット(編み物)
ニットは一本の糸が絡み合ってできていきますので伸び縮みしやすく、柔らかいです。
よって、この点を把握するだけでも特徴がつかめます。
この織りと編みの異なる特徴を生み出す理由は、シルクの糸でも使っている糸の種類が違うのです。
生糸と絹紡糸の違い
1個の繭の糸の長さ(繭糸長)は、1300m~1500mにもなります。だからシルクは一本の長い繊維でできている天然繊維唯一の長繊維と言われます。
ただ、全てのシルク製品が全てその長い糸から出来ているのでしょうか?そうではありません。糸の種類や状態によって様々に形を変えて使われているのです。
シルク糸は、繭から糸をひきますが、その糸を一本で織物などに使っていると思いますか?実際は細すぎて使えません。また、蚕が吐いている最初と最後の方では若干の太さもことなります。そのとても細い糸を何本か束ねながら、均一の太さの1本の糸にしていきます。これを繰糸(そうし)といいます。
これによって出来た糸を、生糸(きいと)といいます。
ただ、繭から取り出される糸のうち生糸には不向きな残糸や、良質な生糸がとれない繭の糸などもでてきます。これを利用してできたのが絹紡糸(けんぼうし)や絹紬糸です。細く裁断した短い繊維を撚り合わせて一本の糸にした絹糸です。つまり紡績した絹糸です。
生糸も絹紡糸どちらもシルクの糸で組成表記にも当然シルク○%と記載されます。これらは糸の持つ特徴が異なるため、利用される商品も違ってきます。
「生糸」の特徴や代表的な仕様製品について
生糸の特徴は、シルク本来の長い糸から出来ていることから、ハリがあったり、光沢のある美しい品物を作る際に用いられています。主に「織物」として使われていると思います。
わかりやすい代表的なものとして、着物やお坊さんの衣、スカーフなどではないでしょうか?
「絹紡糸」の特徴や代表的な仕様製品について
絹紡糸の特徴は、細くした糸が撚られて作られていることもあり、ハリを出す品物には向いていません。その代わり生糸よりも肌当たりが柔らかく感じられると思います。風合いも生糸のような輝きとは違い、もう少し落ち着いた風合いになります。
わかりやすい代表的なものとして、シルクの下着などがあげられます。シルクのニット(おそらく)はほとんどが絹紡糸を使っており、やさしい「肌ざわり」と「きごこち」は、絹紡糸ならではと思います。
織物でも絹紡糸を使います。着物でも紬(つむぎ)は、真綿から紡いた絹紬糸を用いているので、生糸を使用していません。
マスクという点ではどちらがいいの?と思いますが、大きな違いは「毛羽立ち」にあると思っています。紡績された糸はどうしても細かい糸をつなぎ合わせているので毛羽立ちしやすいです。敏感肌の人はそれが苦手という方もいらっしゃるので、肌荒れでお悩みの方は気を使った方がよいかもしれません。
絽紗のマスクは、
マスク本体はすべて生糸です。
耳にかけるシルク紐は絹紡糸です。
生地の名前を確認する
生地の名前が書いてある場合、これは織物なの?ニットなの?どういう特徴があるの?など知っていると安心感が持てますね。記載内容の裏付けをとるにも少し知識があってもよいかもしれません。
生地が「織物」の時によく使われている言葉
サテン、ツイル、羽二重、○○織り、ガーゼ
生地が「ニット」の時によく使われている言葉
天竺、ジャージー、無縫製、ホールガーメント、ニット、編み、
この中でサテン、ツイル、羽二重は後で説明します。織物かニットか分かるだけでも商品の特徴をイメージできるかと思っています。
使用している生地が元々何に使われていたのかを見る
ほとんどの場合は、マスク専用にシルクを織っているのではなく、元々存在している生地を使ってマスクを製造していることがほとんどと思います。
よっては、元々〇〇で使っていた生地を使用しています、といった表記をしていることもあります。例えば、シルクのパジャマで使っていた素材、ということであれば、シルクのサテン生地が多く生地の厚さはこのぐらいかな、などと想像つくかもしれません。
織物生地の詳細編 その1 生地の種類
私たちは絹織物工場です。少しだけ織物の生地について説明します。よく聞かれるのが、サテン、ツイル、羽二重(タフタ)の違いです。これら3種類とも織物ではありますが、糸の交わりパターンが異なり特徴も違います。
画像引用:https://www.excy.co.jp/wordpress/?p=541
織物は基本的にはこの3つのパターンから出来上がります。たて糸とよこ糸の交わるパターンが異なると出来上がった布の見た目(光沢や表情)、肌触り、ハリ感など変わってきます。
サテン(朱子織り)
たて糸を表に多く出して織るもので、表に出ている糸の面積が広いので3つの組織の中では、シルクの光沢が一番出ます。(上の写真だと青の部分が多い)その代わり、摩擦などのスレには弱いです。
シルクのパジャマやドレス、裏地などで多く用いられています。
絽紗シルクマスクでは、しろずきんちゃんシリーズのうさぎ柄マスクなどの表地にシルクサテンを用いています。
ツイル(綾織り・斜文織り)
糸の交差部分が斜めになるので生地に斜めの線が入ったように見えます。(青や黄色が斜めになっている)
平織りよりも摩擦に弱く(朱子織りよりは強い)強度に少し欠けますが、地合は密で柔らかく、シワがよりにくい等のメリットがあります。
シルクのスカーフや、ネクタイなどに多いと思います。
絽紗シルクマスクでは、ツイルの生地は用いておりません。
タフタ・羽二重(平織り)
最もシンプルな構造。たて糸とよこ糸を1本ずつ交互に交差させる織り方です。生地に表裏がなく、頑丈・丈夫で、摩擦に強いです。
着物は平織りのものが多いです。他にも多くのものに用いられています。
絽紗シルクマスクでは、裏地には全て羽二重です。
理由は、
- たてよこのバランスが均一なので凹凸が少なく摩擦が少ないから。
- 毎日洗って使うものなので耐久性が高い方がよいから。
- 五泉の最も得意分野だから
です。
番外編:からみ織り
織りの三原組織とは別に「からみ織り」というものがあります。通気性をだした素材には、ガーゼなどがありますが、着物の世界では「絽」「紗」といった、からみ織りによる生地があります。この「絽紗」というブランドの名前の通り、絽紗シルクマスクでは部分的に絽を使っています。
例えば、インナーマスクには不織布マスクの内側につけるということで絽を使っています。ファッションマスクとして羽二重の上に染めた絽を重ねて、ファッションマスクとしています。
織物生地の詳細編 その2 撚糸の種類
撚糸とは何本かの糸をねじって束ね一本の糸のようにした糸を言います。この撚糸の種類で、生地の柔らかさや風合いがガラッと代わります。
正直なところ、撚糸の種類まで詳しく知る必要はない(書いてあるところも少ない)と思いますが、撚糸と撚っていない糸(無撚糸)では違いがあります。
ベビー用品で無撚糸シリーズ(綿)が良いとうたっているものがありますが、糸を撚らないと風合いが硬くならず柔らかさがでるとのことです。
全ての生地について知っている訳ではないので私ども工場で織っている生地について記載しますが、絹の場合も生糸を撚糸にしたものと、生糸を撚らずに織った生地では風合いや光沢が全く異なります。撚らない方が光沢があり肌触りが柔らかいと感じます。
絽紗シルクマスクで使っている生地は、以下の通りです。
- 裏地の羽二重(たて・よこに撚っていない糸を使用)
- 表地の羽二重(たて・よこに撚っていない糸を使用)
- インナーマスクなどの絽(たて・よこに撚っていない糸を使用)
- しろずきんちゃんシリーズの表地の綸子(たて・よこに撚っていない糸を使用)
- ファッションシリーズの表地の絽(たてに撚糸、よこに撚っていない糸を使用)
織物生地の詳細編 その3 絹糸の種類
あまり気にすることではありませんが、家蚕と野蚕の違いがあります。
これはシルクの糸をつくりだした蚕の種類の違いです。シルクの糸は蚕が作った繭から糸をひいたものですよね。ただ、世の中には繭を作る昆虫は無数にあり、蚕の種類もたくさんあります。
一般的にイメージする美しいシルクは家蚕(かさん)、マルベリー(桑)シルクといい、シルク糸を製造するために品種改良された蚕から紡いだ糸です。家蚕でも品種がたくさんあり皇室で皇后様が育てているのは小石丸という品種ですね。
それに対して、様々な種類の蚕が作る繭から紡いだ糸もあります。野生の蚕ですね。これを野蚕(やさん)ワイルドシルクと言います。特徴は色々ですが、糸が太かったり、白くならなかったり、様々です。
野蚕の場合、明らかに一般的にもつシルクのイメージと違うので、しっかりとその説明がされていることがほとんどだと思います。
織物生地の詳細編 その4 重さや厚さ
そもそも布マスクは、かぜ・花粉・ホコリを防ぐもの、ファッション用として位置づけでウィルスを完全に防ぐものと位置づけられていません。
ただ、飛沫を防ぐなど効果があり、日常的にマスクをつける新しい生活様式を考えると洗って何度も使える布マスクは重宝します。
もちろん布マスクは不織布マスクよりつけ心地が良いものが多く、自分にあうものを探し始めると、生地の厚さや重さも選ぶ要素になってくると思います。
この辺は私どもも大変悩んでいるのですが、生地が厚く高密度であれば呼吸しづらく重くなりますし、薄すぎればマスクとしての役割を果たしづらくなります。よって大変むずかしいところですが、重さを表記しているものもあり、参考にするのもよいかと思っています。
確認その3:原産国
私ども絹織物工場としては、やはり織物・ニットとも日本製がトップクラスと信じています。安心安全で高品質なメイドインジャパンの生地を推奨したいです。
では、原産国が日本と書いてあるなら日本の生地でしょうか?そうとも限りません。
原産国は、その商品が出来上がった場所のように捉えると良いと思います。つまり、マスクの場合、最終的には縫製したところを指すことがほとんどと思います。
例えば、日本で織られた生地を中国に送り、中国で縫製して商品の形にしたら、中国製となります。
逆に中国から仕入れた生地を日本で縫製して商品の形にしたら日本製となります。
世の中の繊維の殆どが海外製です。よって、「原産国=日本」でなければならない理由はありません。
ただ、コロナ禍で急遽必要となったマスクは地産地消ではありませんが、日本の生地、日本で縫製したものをお使いになってほしいな、という思いはあります。
真面目なものづくりをしているところは日本に数多くあります。(私どもも大真面目です。)お客様と素敵な商品との出会いに繋がればうれしいです。
よりよいシルクマスクに出会えることを願っております。