令和の大嘗祭で、わたしたち横正機業場は、
繒服(にぎたえ)の織りを担当させて頂きました。
大嘗祭とは、新たに即位した天皇が、一世一代に限り執り行う行事で、天皇が五穀豊穣や国民の安寧を祈られます。
令和の大嘗祭は11月14日夜から15日未明に行われました。
その大嘗祭で(最も)重要とされるものに、
神様のためのお召し物【神御衣→かむみそ】があります。
神御衣は、
絹の織物 「繒服(にぎたえ)」
麻の織物 「麁服(あらたえ)」
の2つがあり、これらを神様のために供えられます。
天皇しか入れない部屋なのでどこにも映像にでてきません。
わたしたち横正機業場が織った繒服(にぎたえ)
古くから
麻の麁服は阿波国(徳島県)から
絹の繒服は三河国(愛知県)から
調進されるようです。
ただ、繒服について、残念ながら職人不在になり織りについてはお困りのようで、問屋さんを経由して、私どもに相談がありました。しっかりと目の詰まったその美しい織物は、今となっては新潟県五泉市でしか織れない、との判断だったようです。
結果として、愛知県豊田市稲武町の絹糸を用いて、私どもで織らせていただき、無事愛知県豊田市稲武町に納めさせていただきました。その後、宮内庁に調進されたニュースを拝見し安堵しました。
本来このようなに「私たちが織りました」などといったことは、私たちは機屋ですのでご依頼のものを粛々と織るだけで、情報発信することではありません。守秘義務があるように、それが機屋の役割だとも思っています。
しかしながら、このことを知ったNHKさんから問合せがありました。その話の中で、
- 地元にも知られない存在になってしまったが、すごい隠れた技術を持つ新潟県五泉市の絹織物のこと
- 衰退する和装業界の中で、「白生地に、未来をのせて。」のメッセージを掲げ「新しい工場」に向けての挑戦している当社のこと
- そこから産まれた、シルクストール「絽紗」とシルクベビー用品「しろずきんちゃん」など今までにないシルクの製品のこと
- 五泉シルクを子どもたちにこそ伝えようとする「五泉シルク織物未来学校」のこと
さまざまなことに感銘を頂き、もっと全国の皆様に五泉のシルクのことを知っていただきたい、と言っていただけました。
各方面に放送の許可いただきながら、繒服の件をテレビで放映をしていただくこととなりました。しかも全国放送です。感謝です。
NHK あさイチのサイト
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/archive/191121/1.html
全国放送ということもあり、もし視聴者からの問合せがあったときのことを考えて、いつもはお休み期間中ですが、日本橋三越本店で一時的に商品を取り扱って頂けることになりました。ただ、お問合せのあった方にご紹介をする、ということになっておりますので、見てみたいという方は、店員にお声がけ頂ければと思います。
絽紗のこれからについて
さて、私どもの本業は機屋で、白いシルク生地だけを作る工場です。よく昔からのストールメーカーのように思われますが、そうではありません。絽紗を立ち上げてまだ4年です。
4年前は商品とすることも、販売することも全くノウハウがなかったため、とにかく消費者の声を聞くこと、商品に反映させること、全てが勉強のような状態で改善・改善で進めて参りました。その中でお客様からの高い評価や称賛の声を頂けて励みとなりました。
先人たちが築いてくれた技術や、今のベテラン職人さんの高い挑戦意欲、何よりお客様からのご支持があり、4年続けてきました。
ただ、これからは次のステージに進んでいかなければならないのかも知れません。
なぜかというと、来年は直接ご覧頂ける場がなくなるからです。
- 2月から8月まで:日本橋三越本店の本館1階
- 1年中:新潟三越
日本橋三越本店は、会社方針による売場改革ため。
新潟三越は、3月末をもって閉店のため
という理由です。
私どもも、新しく作った生地でもありノウハウも少なかった為、お客様の声を聞くことを最優先とし、拡大路線は全く取らず、限られた場所で丁寧にご紹介しよう、としておりました。
そうしましたら、それら2つの場所でご紹介できなくなり(ちょっと予想外でした)、来年は直接手にとってご覧頂けるお店がゼロとなります。
楽しみにされていたお客様、大変申し訳ございません。
全くノウハウのないはじめの頃の絽紗を、支えてくれた2つの売り場と離れなくてはいけなくなったのは、非常に悲しいことですが、これはさらなる飛躍のために、与えられた試練なのでしょう。
東京という集中マーケットで販売するのではなく、新潟県五泉市の工場に来れば、商品が見れるといった、より地方にに根付きながら価値を高めていくことが必要なのかもしれません。
百貨店という他力本願ではなく、自分たちでお店を出すなど、主体的に動く時期なのかもしれません。
日本の優れた技術をもっと海外に発信し、「五泉シルク」ブランドを築くべきなのかもしれません。
これからのインターネットでの時代の中でもっとお客様によりそった販売方法をとるべきなのかもしれません。
いずれにせよ、私たちは、全てを受け入れ、前向きに次のステップに向かいます。
次にチャレンジも期待してください。